Scott Joplin Reconsidered:Reflections

Lara Downes (Piano) 

ラグタイムの王、スコット・ジョプリンをアメリカのピアニスト,ララ・ダウンズが再考する。ララ・ダウンズはこれまでも何らかの理由で祖国を離れざるを得なかった作曲家達、アメリカ近現代作品を通して黒人の苦難の歴史などテーマ性の強いアルバムをリリースしてきたSteinway & Suns ピアニスト。今回はその流れを汲む黒人作曲家・ピアニストのスコットジョプリンを取り上げている。スコット・ジョプリンの名前とラグタイムという音楽は知らなくても1970年代の名画『スティング』のテーマ曲といえば知らない人はいないだろう。

ジョプリンは1868年に奴隷農夫の父と自由民の母の間に生まれた。黒人差別をテーマにした映画『グリーンブック』の時代背景が1962年なので、その遥か100年も前と言えば才能がありつつも数多くの苦難があったことは想像に難くない。

ラグタイムはジャズに大きな影響を与えたけれども、基本的に楽譜通りに演奏するためジャズではない。シンコペーションを特徴とした軽妙なこの音楽は19世紀後半にアメリカの酒場、売春宿で奏でられていたピアノ曲だった。

クラシック音楽のピアニスト・作曲家を目指していたジョプリンは欧州のクラシックとアフリカのハーモニーを結びつける音楽として洗練されたラグタイム曲を多く発表しそのジャンル自体を確立することに大いに貢献した。これに踊りを付けたのがフォックス・トロットでアメリカだけではなくヨーロッパにも伝わり当時の作曲家に大きな影響を与えた。ロシアのショスタコーヴィチ もフォックストロットという題名をつけている作品があるくらいで、その元はラグタイム。こう見てみるとジャズにもクラシックにも刺激を与えたジョプリンの功績はとても大きかったのだなと思う。

その後、多くの音楽同様、時代と共に演奏されなくなり廃れていくわけだが、1973年に映画『スティング』が制作され、その背景である1930年代という時代に合わせて『The Entertainment』が使われジョプリンとラグタイムが再度脚光を浴びるようになった。その頃から更に半世紀経っているが、今ではジョプリンが目指し作曲しながらも当時は全く見向きもされなかったオペラ、歌曲なども盛んに演奏されるようになっている。

2022-176



Classic Music Diary

仕事で年間1,000枚程度クラシック・ジャズのハイレゾ新譜を聴いています。毎日4-6枚試聴する中から気になったものを日記がわりに書き留めていこうと思います。

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