The Soldier’s Tale STRAVINSKY
Isabelle Faust, Dominique Horowitz , Alexander Melnikov , etc
(harmonia mundi)
ドイツ人ヴァイオリ二ストIsabelle Faustが、今年没後50年を迎えるストラビンスキーの三つの作品を取り上げたアルバム。”Elegie”では独奏ヴァイオリン、”Duo Concetranto”ではMelnikovとの共演、そして『兵士の物語』では7人のアンサンブルという、それぞれ異なる形態での演奏を披露しており、1アルバムで3度美味しいという、ファンにはたまらなく嬉しい企画だろう。ファンでなくともクラシック好きなら聴いてみたい内容。
『兵士の物語』は、1918年発表。ロシア革命により全財産を没収されたストラビンスキーが生活の糧のために作った作品で元々は、朗読、演劇、ダンスからなる小規模舞台作品。なんとか初演に漕ぎ着けたものの、ちょうどその時スペイン風邪が猛威を振るったっため、巡演のキャンセルを余儀なくされたという。今のコロナ禍と重なる状況だったようだ。
このアルバムは、その全編版で朗読+7人のアンサンブル。オペラ同様に朗読の内容、話の筋が分からないと面白くもなんともないだろう。
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第1部 ヴァイオリンを引く兵士の元に悪魔が現れ、弾き方を教えてもらうのと引き換えに「カネのなる本」との交換をする。未来の相場が書かれているその本を使い金持ちになるのだが何故か心は空虚で満たされず。しかも、もうバイオリンも弾けなくなっている。
第2部 旅に出た元兵士は、とある国の王女が謎の病気に伏しており治せた者は結婚できるという話を聴く。その王女の元に行くと何とあの悪魔がいるではないか。元兵士は悪魔とカードゲームで対決し負けて全財産を失うが、変わりに魔力が解けてバイオリンを弾けるようになる。王女はそのバイオリンを聴いて病から治る。負けた悪魔はもし国境を越えれば2人は自分のものになると警告し去る。後に望郷の念に駆られた元兵士は王女とともに国境を越えてしまい、再び悪魔の手に落ちてしまう。
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ヴァイオリンが主役で活躍する舞台音楽なのでIsabelle Faustとしては挑戦のしがいのある曲だったのだろう。1人でも、また誰と組んでも作品の核心をついて聴き手を引き付ける演奏力はさすがharmonia mundiレーベルの看板アーティストだけのことはある。
また、Keyとなる朗読には、英語、独語、仏語の三バージョンがあるのでリスナーは好きな言語を選ぶことができるという珍しい品揃えになっている。
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