Dreams and Tales; Picture at Exhibition

Michele Campanella ,piano.         (ODRADEK)  96KHz/24bit

ムソルグスキーの有名な『展覧会の絵』。ピアノ版を弾いているのは、Mr.Michele Campanella 。1947年生まれイタリアのベテランピアニストで指揮者としても活躍している。ベートーベンのピアノソナタ全曲録音、ブラームス変奏曲の全曲録音なども残しており、欧州、特にイタリア楽壇では有名な人物。とりわけ長年にわたるリストの研究者としてよく知られている。

『展覧会の絵』はモーリス・ラヴェルによる、迫力があり煌びやかな管弦楽版がとても有名だが、原典はピアノ版の方である。ただ、そのオリジナルは完全に仕上がっていないピアノ・スケッチ(下書き)と捉えられており、ピアノ版にしても編曲版がいくつかある。

50年近くこの曲と付き合ってきたカンパネラ氏によると、ラヴェルのような優れた音楽家による管弦楽編曲であっても、やはりそこにはオリジナルにはない余計な色彩感が付いてしまっている。画家である友人の急な死をきっかけとして短期間のうちに湧き上がるアイディアを書きとめたということ自体に作曲家のストレートなインスピレーションを感じる。何かを足すことによって、そこにある素朴なロシア的活力、刺激、グロテスク感などの魅力は損なわれてしまっているのだという。そのため、ムソルグスキー自身の原ピアノ版を重んじている。

このアルバムを聴いて華美な感じが全く感じられなかったのはそのような解釈だったからだ。素朴な響きの、まさにいぶし銀のように光るピアノの音色が特徴で、それゆえの充分な余韻が印象的だ。まさに、作曲者、演奏者と一緒に一つ一つしっとりと故人の絵画を見て廻っていくようなツアーを味わうことができた。

氏とはコロナ前2019年アドリア海に面した風光明媚な町ぺスカーラの海辺のレストランでシーフードを一緒にいただいたことがある。マエストロでありながら、気さくでナポリっ子らしい人懐っこい笑顔が魅力的だった。74歳になった今年、コロナの中でも新しいプロジェクトに取り組み、新譜を出してくれたのが何より良い便りになった。

2021-851

Classic Music Diary

仕事で年間1,000枚程度クラシック・ジャズのハイレゾ新譜を聴いています。毎日4-6枚試聴する中から気になったものを日記がわりに書き留めていこうと思います。

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