FLORENCE BEATRICE PRICE : Sym.No.3

John Jeter , ORF Vienna Radio Symphony Orchestra (Naxos) 96Khz/24bit

アメリカ初の黒人、女性作曲家であるフローレンス・ベアトリス・プライス(1887-1953)はアメリカ南部アーカンソー州のリトルロックで生まれた。

1862年にリンカーンによる奴隷解放宣言が行われたものの、まだこの頃は南部では黒人隔離政策が合法とされておりそれは1964年まで続いた。

プライスの父親は州知事が通うほどの著名な歯科医だったということもあり生活環境はかなり恵まれていて裕福だったと言える。

とはいえ、そういう社会環境なので裕福で才能があり音楽の道を志したものの、他の黒人同様の困難が付きまとっていただろう。映画『グリーンブック』の実話が1962年だからそれよりまだかなり前なので様子は想像できる。

名門であるボストンのニューイングランド音楽学校院に入学の際も母親が出身をメキシコと書いたほどだった。祖先のさまざまな血の混じりでプライスの肌は薄い褐色だったので本当にメキシカンだと思われていたそうだ。

その後、3人の子供を持ち教師をしながら1932年に応募した作曲コンクールでピアノ協奏曲と交響曲でダブル一位となり注目され、その作品が名門シカゴ交響楽団で演奏されてその名が広まった。

もちろん、全米の黒人社会の中では希望の星とされ賞賛されていくのだが、それでも作曲家として安定的な仕事を見つけることは黒人しかも女性であるゆえに難しかったようだ。著名なホールで演奏するのは当時ほぼ白人で聴衆もほとんど白人だという現実だろう。

この仕事をしていると数多くの忘れ去られた音楽家を知ることになるのだが、それはほとんど音楽の流行廃りの大きな波の中で埋もれてしまう人々で、ある面しょうがないのだが、人間の作為によって、この場合は人種差別(及び女性)という理由で作品が取り上げられてこなかったというのはそれとは違い不条理だとしか言いようがない。

プライスの作品は、南部の黒人音楽の影響が見られると簡単に書かれるが、それは作品によってであり交響曲第三番はロマン派の影響をうけつつ、ドボルザークのように民謡を取り入れているのかもしれないが、自分の音楽にしているため、どこに使われているのかはあまりよくわからない。

細かいことは置いておいて独創的でメロディアスないい曲だった。

300を超える作品は今まであまり録音されてきていないが、今後演奏されるようになっていくに違いない。ドラマチックなプライスの人生は、数年したら映画が作られるかも知れない。

2021-1069

Classic Music Diary

仕事で年間1,000枚程度クラシック・ジャズのハイレゾ新譜を聴いています。毎日4-6枚試聴する中から気になったものを日記がわりに書き留めていこうと思います。

0コメント

  • 1000 / 1000