CARL FRUHLING: Piano Works

Oliver Triendl, etc.                  (Hannssler) 48khz/24bit

カール・フリューリングという人は全く知られていないが、著名なイギリスのチェリストSteven Isserlisのファンならアルバムでたまに取り上げられているので聞いたことがあるかもしれない。イッサーリスはたまたま友人が紹介してくれたフルート三重奏を聴いて気に入り、これはいったい誰なのか調べたのだが、大事典まで見ても記述がなく、それが彼の好奇心を刺激して自らその作品と経歴を調べることになった。わかったことは、1889年頃にピアノの勉強を終えリスト賞を受賞。すぐにピアニストとしての地位を確立し室内楽奏者として人気を博す。しかし、作曲家としてはハードルがあったようだ。経歴については、当時の新聞での紹介記事ではウィーン生まれとなっているのだが、イッサーリスが結構な時間を割いて調べた幾つかの文書とでは齟齬があり、現在のウクライナ、リヴィウで1868年生まれとなっていた。イッサーリスはちょっと混乱したそうだが、これはユダヤ人であるフリューリングがその出自をカモフラージュする為だという結論に至る。当時、レンベルグと言われたリヴィウではユダヤ人の街と言っていいくらい多くのユダヤ人が住んでいたらしい。この宗教上の理由で作曲家としてやっていくには難しい環境だったそうだ。その為プロテスタントに改宗し、履歴書上ではウィーンで生まれたということにしたということがわかってきた。イッサーリスの洞察では彼が書いた100余りの作品のうちのほとんどはナチスによって廃棄されたか戦争によって散逸したかだという。因みにイッサーリスはイギリス人だが父方の祖先は現在のモルドヴァでウクライナ東側のリヴィウとは距離にして400キロぐらいしか離れていない。

このアルバムではピアノ四重奏と比較的取り上げられることのあるピアノ五重奏を収録しており、フリューリングだけのアルバムとしては初めてなのかもしれない。曲は後期ロマン派的でイッサーリスが即座に気に入っただけありバランスの良い聴きやすいメロディが特徴的で何度聴いてもいいと思う魅力的な曲だ。

2022-400

Classic Music Diary

仕事で年間1,000枚程度クラシック・ジャズのハイレゾ新譜を聴いています。毎日4-6枚試聴する中から気になったものを日記がわりに書き留めていこうと思います。

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