Musical Remembrance (Piano Trio)
Neave Trio (Chandos)
アメリカ・日本・ロシア出身者によるNeaveTrioの新譜は『記憶』というキーワードで繋がれた3曲。何の音楽の『記憶』なのかというと、ラフマニノフの『悲しみのエレジー』は、1893年11月に敬愛するチャイコフスキー が無くなって一ヶ月も立たないうちに完成された故人を偲んだ曲でチャイコフスキーの『偉大な芸術家の思い出』という、まさにラフマニノフの想いそのものの題名の曲の構成をほぼなぞったもの。
ブラームスのピアノ三重奏曲第一番は、1854年駆け出しの頃シューマン夫妻と知り合った当時の作品で、ブラームスのクララへの(片)想いが込められていると言われている。興味深いのは大作曲家となった後の1990年にこの曲を自ら改訂しているということで、ブラームスの継続しているクララへの敬意と愛情を感じざるを得ない。
ラヴェルについては、1914年に避暑地で第一次大戦の勃発を知り、徴兵を覚悟したラヴェルが通常5ヶ月かかる作品を5週間で書き上げたという曲。一旦戦地に赴いたら生きて帰って来れないことをシリアスに考えた上での魂を込めた作曲だったと言える。実際、ラヴェルは徴兵され輸送員として配備された。不安、静寂と爆発的なオーケストレーションが特徴的なラヴェル唯一のピアノトリオ。
作曲の背景を知りその込められた想いを想像しながら聴くと曲への印象がガラッと変わったりもする。良いテーマでまとめてくれたアルバムだった。
2022-609
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