TIMES OF TRANSITION-Cello Concertos By C.P.E Bach And Haydn

Andreas Brantelid, Cello and Concerto Copenhagen   

(Naxos)


バロック期から古典期への移行をチェロ協奏曲という観点から辿ってみようというプロジェクト。


ということでタイトルにTransitionという名をとっている。このように音楽史の移行期をテーマにしたアルバムは少なからずあり、鍵盤楽器、オルガン曲などで同じテーマのアルバムを聴いたことがある。アーティストにとっては創作意欲のわくテーマなのだろう。

年代順にC.P.E Bachのチェロ協奏曲3番、ハイドンの1番、2番と並べている。バロックの時代は一般に1600−1750とされているが、この年代設定は便宜的なもので、当たり前だが文化の変化は徐々に行われていくものである。


私は真ん中のハイドンの1番から聴いてみた。作曲されたのは1765〜1767年。両端の楽章にソナタ形式が使われている。これは古典派時代に始めて登場した形式だが、第2楽章はバロックのしきたりを残す融合的な作品。だからと言って中途半端というわけではなく、それを意図したハイドンの代表作の一つ。


第2番は1783年ハイドン円熟期の作品で各楽章はソナタ形式・ロンド形式・ロンド形式と流れ、すっかり古典派の様式が確立している。第一楽章は14分もある。10分程度の交響曲も多く作ったハイドンにしては随分と長い。それだけ充実していた時期なのだろう。


C.P.E Bachからは、3作のチェロソナタから傑作と言われる3番のイ長調。彼の生涯は1714-1788年で、この曲は1753年に作られた。ハイドン1番の約15年前ぐらい。

バロックの後期でまさに移行期の作品。それまでのバロック音楽特有の壮重、力強い、精緻というスタイルの反動として出てきたギャラント様式という軽快で優雅なスタイルをとっている。

もちろん、伝統的なバロックの香りは残っているものの、軽やかで華やか、しかもシンプルなメロディは、チェロという楽器の魅力を充分に引き出している。

普通のリスナーからすれば、様式とか細かいことはどうでもよく、その作品と演奏を気に入るかどうかということが大切なのだが、このような観点でそれぞれの作品を聴いていくと、これら名作の新たな味わいが増すのは間違いない。


なお、チェリストのAndreas Brantelidが使用している楽器は、1707年製ストラディバリ、「Boni-Hegar」。

2021-702




Classic Music Diary

仕事で年間1,000枚程度クラシック・ジャズのハイレゾ新譜を聴いています。毎日4-6枚試聴する中から気になったものを日記がわりに書き留めていこうと思います。

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