TEMPO E TEMPI

Pina Napolitano, piano

(Odradek)

その名前のとおり、イタリアのナポリ出身のピアニストPina Napolitanoは、pescara 音楽院で学んだ。系譜としてはMichelangeliの直系の弟子であり演奏活動の傍らベネチア音楽院で教鞭をとっている。pescara という町は長年michelangeliの調律師として有名なfabrini氏の工房もあるアドリア海に面した風光明媚なところだ。


ローマに拠点のあるodradek recordからの5枚目のアルバムは、2012年に103歳で亡くなったアメリカの現代作曲家エリオット・カーターとベートーヴェン 作品を交互に組み合わせたものとなっている。


始まりがカーターの1980年作曲 night fantasies でバリバリの現代音楽。絶えず変化する気分を表すというピアノ音楽。眠れない夜に次から次へと湧き上がってくる思考のようだと作曲家本人が語っており、それを表現するため極めて多くの断片的要素の繋がりによって成り立っている20分以上ある大作でとても情熱的な盛り上がりを持つ。


その後にベートーヴェン の31番、カーターの2002年two thoughts about piano、ベートーヴェン 32番と続き、各作品を対比させていく。


このような比較方法でアルバムを展開していくのはpinaの得意とするアプローチで、前作でも、ブラームス作品とWebern、Bergという正反対に思える作風を持つ作曲家の作品を対比させつつ、そこには類似点があり、保守派の代表と言われているブラームスではあるが、実は意外にも革新者の一面もあると言うことを示した。

ベートーヴェンとカーターは人間の内側から発露してくる感情自体は結構素直なものと捉え、その感情を鍵盤の上で表現しようとしたに違いない。もちろん、その芸術的なアプローチ方法は両者で違うのだが、深いところで探っているのはなかなかに理解し難い、人の持つ複雑な内面、人間性である。それは100年の時を隔てていても変わらないテーマなのだということを感じさせてくれた。


このアルバムではベートーヴェンをことさら厳粛に弾いてもしょうがないので、敢えて、軽やか、朗らかに弾いてアルバム全体の統一感を持たせており解釈として秀逸。      

 No.2021-712

Classic Music Diary

仕事で年間1,000枚程度クラシック・ジャズのハイレゾ新譜を聴いています。毎日4-6枚試聴する中から気になったものを日記がわりに書き留めていこうと思います。

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