HAYDN; Baryton Trios

Valencia Baryton Project.                 (Naxos)  FLAC 96Khz/24bit

Barytonという楽器は17世紀後半に作られ18世紀を通して盛んに使われたが、その後急速に廃れてしまった楽器だ。今日までに数多くの種類の楽器が廃れていったが、その理由はたいてい時代の要請に合わなくなったか、調律・演奏が難しいといったところで、Barytonもその例に漏れていない。

Barytonは、前面に6-7本のガット弦、後ろ側に金属弦12-24本がついており、ガット弦を弓で弾くと金属弦が共鳴するという仕組み。金属弦部分を指で引くこともある。

このアルバムもよく聴くとところどころに、後方弦を指で弾く特徴的なピッチカートの音が聴こえる。

ハイドンは当初、この楽器のことを知らなかったが、宮廷楽長として仕えていたエステルハージ家侯爵ニコラス1世がこの楽器を好み自ら演奏した。そのため、真面目なHaydonは研究を重ねてご主人様のために176曲ものBarytonの曲を残した。いくら演奏が上手いと言ってもプロとは違う侯爵である。彼が弾く時のためにスローで楽章も短めに書かれている。当然の忖度だろう。

ヴィオラ・ダ・ガンバをはじめとしたこの時期の楽器は、現代とは全く違う圧倒的に静寂の多い環境、しかも宮殿での演奏を想定しているため楽器自体音を大きく出す必要がない。

今では知る人もほとんどいない忘れ去られてしまった楽器だが、このむかしの楽器が弱音で奏でる雅やかな音色はとても優しく癒される。

2021-595

Classic Music Diary

仕事で年間1,000枚程度クラシック・ジャズのハイレゾ新譜を聴いています。毎日4-6枚試聴する中から気になったものを日記がわりに書き留めていこうと思います。

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