TUVAYHUN- Beatitudes for a Wounded World

Nidarosdomens Jentekor & Trondheimsolistene.    (2L) DSD11.2Mhz/1 bit

グラミー賞の音響・サラウンド部門中心に38回もノミネートされているノルウェーの高音質レーベルとして名高い2Lの新譜。プロデュース、録音、ミックス、マスタリングまでモルテン・リンドバーグがほぼ一人でやっている。アルバムの写真はプロの写真家の奥さんが撮っており、トレイラービデオも自分で撮影しているという典型的なブティックレーベル。ブティックレーベルから優秀録音が数多く出る理由は大体において卓越した録音エンジニアが興したレーベルでその巧みの技と最新の録音技術を使って自分の理想のアルバムをプロデュースしているからで、彼らは自分が完璧だと思うまでその制作を突きつめる。皆さんそれぞれ違った信念を持っていて、モルテンの場合は完璧な演奏が訪れる『マジックモーメント』を逃さないということとホールで聴く以上のものをレコーディングアートとして作るという事で基本的には芸術家と言っていい。

今回はノルウェーの現代音楽作曲家1980年生まれのキム・アンドレ・アルネセンの合唱作品。タイトルの『Tuvayhun』はアラム語で『幸いなるかな』という意味で、「傷ついた世界のための至福の教えという副題がつけられている。テーマが明確に示されていて「環境危機、大量移民、地球規模のパンデミック、政治的二極化、所得不平等の拡大、権威主義体制の興隆、前例のない社会変化といったことで傷ついている世界」と「それにもかかわらず、よく見れば世界は美しい」となっている。聖書からのテクストを交え、古を感じさせる部分と現代との交錯が所々に顔を出す。

ほぼ今は合唱に集中しているアルネセンの作品は心を揺さぶるような純粋さで感動する作品が結構あって、仕事以外で好んで聴く数少ない現代音楽作曲家だ。このアルバムでもトロントハイムのニーダロス大聖堂少女合唱団とトロンハイム・ソロイスツによる演奏となっており2Lの作品ではお馴染みのグラミーメンバーによる透明感ある歌声と隙のない演奏でこのテーマ性の強い作品をじっくりと聴かせてくれる。

2022-1095

Classic Music Diary

仕事で年間1,000枚程度クラシック・ジャズのハイレゾ新譜を聴いています。毎日4-6枚試聴する中から気になったものを日記がわりに書き留めていこうと思います。

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