LISTZ:Rapsodie, Etudes, Transcriptions

Sophia Agranovich (Centaur) 

当時のソ連ウクライナ出身でアメリカで活躍しているアグラノビッチは、神童と言われていたに違いない。既に6歳の頃からコンサートで弾き始め10歳でウクライナのヤングミュージシャンワード最年少授与。キエフ音楽院、モスクワ音楽院を経て15歳にてジュリアード・スクールに入学。しかもフルスカラーシップで著名な教授陣に師事。ベルゲンコンペティションでも優勝しエリートの中でもかなり極めた方を歩いていたが。

ところが1980年代には一旦ピアニストを辞めてコンピュータサイエンスを勉強しIT業界に入りメリルリンチなどで幹部にもなり成功者となったのだが。

2008年にそのIT業界から足を洗い、またピアニストに復帰したというユニークな経歴を持つ。それ以外にも哲学の博士号をとったり、ヨガ、ピラトのインストラクターをしたりといわゆる人間の脳を存分に使ったマルチな才能の方。2012年にはスタンウェイピアニストにアサインされ、以降コンスタントにアルバムを2年に1枚ぐらい出してきている。教育者としてもつとに有名で教育関連のアワード受賞歴が最近は多い。スタンウェイピアニストでもある彼女が今回使ったのはスタンウェイDである。

ハンガリーラプソディの6番はピアノのパーカッシブな弾き方、スタッカートがふんだんにあり、また鍵盤の左端から右端まで使い、最もヘビーなタッチも最も軽いタッチもあるピアノの持つあらゆる弾き方を詰め込んで聴きごたえがある作品だと思っているが、彼女はスピードコントロールとハンドプレッシャーを維持して軽々と弾いているように聴こえる。そこにイマジネーションを加える余裕がどこにあるのかピアノ初級レベルの域をいつまでも出ないわたしにはさっぱりわからない世界だ。

演奏は基本ドラマチックでそれを過剰に感じる人もいるかもしれないがこれが普通に人々が思い描くリストの姿だと思う。ジュリアードスクールで師事したナディア・ライゼンベルグはリストの孫弟子なのでそのロマン派の伝統を引き継いだ濃い演奏。きっとリストはこんな風に弾いていたんだろうなと思った。

2022-1151


Classic Music Diary

仕事で年間1,000枚程度クラシック・ジャズのハイレゾ新譜を聴いています。毎日4-6枚試聴する中から気になったものを日記がわりに書き留めていこうと思います。

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