MONK OF SALZBURG:The Anonymous Lover

Duo-Enssle-Lamprecht (Audax) 

中世の西洋音楽というとグレゴリア聖歌を始めとしたキリスト教宗教音楽しかないかのような印象があるが、世俗音楽もしっかりと社会に根を張っていた。いわゆる吟遊詩人が諸国を渡り歩き活躍しており、フランスではそれはトルヴァドールと呼ばれ、それから半世紀遅れる13世紀から14世紀にかけて北ドイツではミンネゼンガーと呼ばれた人々である。ミンネ=愛のsaenger=歌手。彼らは通常騎士或いは貴族階級に属し自ら作詞・作曲をした。但し、実際の演奏はジョングルールと言われた低い階層の従者が受け持ったようである。

そのミンネゼンガーの中でやや有名なのが『モンク・オブ・ザルツブルク』。本名を含め詳しいこと不明だがザルツブルクで修道院に属して働いていたことだけは分かっているのでこのように呼ばれている。愛の歌だけでなく幅広いテーマの彼の歌曲は当時随分と流行していたようで16世紀になっても歌い継がれていた事が資料から確認されている。

世俗音楽はどの時代にもありミンネゼンガー達登場の前からあったのだが、記譜自体が残っていないため我々にとってはどんなものかは分からない。或いは残っていても解読不能。幸いトルヴァドール、ミンネゼンガー達はネウマ譜で記譜していたためリズムまでは正確にはわからないもののその歌曲は復元して演奏する事ができる。愛や、酒、失恋などの今でも変わらない庶民の生活の一面を素朴な旋律に載せて歌い上げるのが魅力で中世欧州の人々の生活の息吹が聴こえてくるようで結構好きなジャンルだ。世俗歌曲として『愛』を歌うのは彼らが発祥だとも言われている。また、素朴ながらも自然発生的に三度の旋律を多用するようになった彼らの歌曲・楽曲ははるか500〜700年後にはバッハ、ベートーベンの音楽として結実していくことになる。その西洋音楽の源流の一人となるのが『モンクオブザルツブルク』だが、その名前は誰も知り得ない。

2011-1170


Classic Music Diary

仕事で年間1,000枚程度クラシック・ジャズのハイレゾ新譜を聴いています。毎日4-6枚試聴する中から気になったものを日記がわりに書き留めていこうと思います。

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